衝撃!伝統工芸品・甲州印伝の魅力にせまる【印傳屋】取材レポート
先日、甲州印伝の製造・販売をしている「印傳屋 上原勇七」さんへ取材させていただく機会を頂きました。
こちらは、甲府市中央にある本店ではなく、甲府市東部に位置する本社兼工場です。
それは…
- 戦国時代に創業、400年もの歴史
- 門外不出だった技術がここ数十年でオープンになった
- 「鹿革に漆」以外の印伝が他に2つある
とのことです!
簡単に説明すると…
まず1つ目に、印傳屋さんは天正10年創業とのことですが、天正10年(1582年)って、いつの時代かわかりますか?
天正10年(1582年)
多くの山梨県民から支持される武田信玄公の息子・武田勝頼公が自害をして武田家が滅亡した年であり、または織田信長公が暗殺された本能寺の変があった年
戦国時代、真っただ中!!
わたしは歴史に大して詳しくもない普通の主婦ですが、「え、そんな時代から印伝ってあったの?😲」と衝撃を受けました。
2つ目に、400年以上もの間、「印伝」の技術は、代々家長をつとめる「上原勇七」のみに口伝(一子相伝)されてきたため門外不出だったとか。
13代目の上原勇七が、はじめて世間にオープンしたとのことです。
わたしも今回、門外不出だった甲州印伝の技術を見学させていただきました(下に写真レポートあり)。
3つ目に、「印伝」というと、鹿革に漆で模様をつけたものと思っていましたが、実は3つあり、「漆の印伝」「煙でいぶす印伝」「顔料で色を重ねる印伝」もあることがわかりました。
それもすべての工程において、手作業の職人技ばかり✨
今回の取材でわかったことをもとに、レポートしていきます。
甲州印伝の魅力に一緒に迫っていきましょう。
なお、今回の取材は、CIH(株)の合同取材によるものです。
甲州印伝とは?
伝統的工芸品に認定
印伝とは、おもに鹿革に漆で模様をつけた革製品です。
戦国時代は鎧や兜に用いられ、現在では小物入れや財布、バックなどが作られています。
「甲州印伝」は山梨県指定の伝統的工芸品(平成6年10月)であり、さらに国指定の伝統的工芸品にも認定(昭和62年4月)されています。
国指定の「伝統的工芸品」に認定されるには、5つの条件があります。
- 主として日常生活の用に供されるものであること
- 製造過程の主要部分が手工業的であること
- 伝統的な技術・技法により製造されるものであること(100年以上の歴史)
- 伝統的に使用されてきた原材料が主たる原材料として用いられ、製造されているものであること(100年以上継続的に使用)
- 一定の地域において少なくない数のものがその製造を行い、または製造に従事しているものであること
ちなみに山梨県の伝統的工芸品は「甲州印伝」のほかに、甲州貴石細工(昭和51年6月指定)、甲州手彫印章(平成12年7月指定)があります。
※参考 山梨県ホームページより
印伝の歴史
今や伝統工芸品となった印伝ですが、冒頭でもお伝えした通り、長い歴史があります。
印伝の歴史について、簡単にレポートしていきますね!
革製品の歴史を見るとさらに遠く、奈良時代に作られた文箱(東大寺蔵・国宝)が知られています。
この文箱は、「燻」という技法で作られていました。
「燻」とは、鹿の革を煙でいぶして色をつける技で、甲州印伝のルーツといわれています。
さらに戦国時代になると、この「燻」技法は鎧や兜に使われ、さらに色鮮やかに顔料を重ねていく「更紗」という技法も加わります。
燻技法更紗技法
引用:印傳屋公式サイトより
江戸期頃、印傳屋の遠祖である上原勇七氏が鹿の革に漆をつける独自の技法を創案。
これが「甲州印伝」のはじまりといわれているそうです。
「漆」以外の2つの技法は、「燻」「更紗」となります。(下でくわしく紹介しています)
以来、印傳屋では「上原勇七」の名が受け継がれ、勇七のみに家伝の秘宝として代々口伝されてきたとのことです。
時代の流れとともに、印伝技法の普及のため世間一般にオープンされることとなったのは、ここ数十年でのできごとです。
ドラマのようなストーリーにドキドキしますね!
続いて、印伝の特徴について、紹介していきます。
甲州印伝の特徴
甲州印伝はすべて鹿の革をもちいた革製品です。
鹿革の特徴は
- 軽い
- 丈夫、破れにくい
- 柔らかい
- 肌なじみがよい
- 火に強い
- 使うほど手になじむ
などがあげられます。
さらに、漆を塗ることによって、水をはじく・汚れにくいなどのメリットができました。
一方デメリットとしては、漆を塗っていないところは水に弱いところ。
皮の中に水や汚れが入り込むと、ムラになったりしてさらに取れにくくなってしまうため、印伝製品を使うときは水に当たらないようにすることが大切です!
鹿ってどんな鹿?
印傳屋さんは、鹿の革をなめしたもの(白革)を仕入れてくるそうです。
鹿は中国産の鹿が一番多く、アメリカやオーストラリア産など、ほぼ輸入しているとのことです。
印伝に使われる小型の鹿(キョン)は、なめした革のきめが細かく最高級品と言われています。
1頭1頭染まり具合などに違いがあるそうですが、職人さんの手によって、どれをとっても高品質となるように作られていきます。
また生きていたときにできた傷やツノの傷などもありますが、それは天然素材の持ち味ととらえることができるそうです。
3つの技法
甲府市東部に位置する「印傳屋」さんの本社(工場)では、漆と燻の技法を見学することができます(要予約)。
門外不出だった技術、今回はわたしも見学させていただきました。
上原家に代々伝わる家伝の秘宝は、「漆」「更紗」「燻」の3つの技法があることを、上でも紹介しました。
ここでは3つの技法について、より詳しく見ていきましょう。
通常、甲州印伝は下記のような製造工程となります。
印伝のおもな製造工程
- 染色
- 荒断ち
- 柄付け(漆付け・更紗)
- 裁断・縫製
- 仕上げ
- 検品
革の目利きからすべての工程において、1枚1枚人の手で作り上げていくのです✨
行程③の柄付けで、「漆」と「更紗」が出てきますね!
「燻」は上記の製造工程① の染色が「燻技法」となります。
3つの技法「漆」「更紗」「燻」について説明していきます!
漆(うるし)技法
なめした鹿革に漆で模様をつけていく技法です。
一般的に印伝というと、この漆で模様をつけたものですね。
表面がポコポコと立体的なのが特徴です。
こちらは、印傳屋さんのYouTube です。
漆技法についてわかりやすく紹介されています。(※音は出ません)
模様は型紙を用いて、漆を乗せて均一にならします。
型紙を外し、ムロで乾燥させます。
乾かす温度や湿度も、その時々で変化しますが、2日~1週間ほどかけて乾かすそうです。
鹿の革は親水性が高く、革の中に水や汚れが入りやすいため、もともとは汚れを防ぐために漆を塗ったといわれています。
漆は光沢があり見た目の美しさから、現在では装飾性が重視されています。
模様は古くから守られてきたオーソドックスなものから、新しく作られたものなどさまざまです。
漆の色・革の色・模様によって、何パターンも作り出すことができます。
印傳屋さんのお店では、店頭に並んでいるもの以外にもあるそうです。
「他にもありますか?」と聞くと、奥から出していただけるとのことですよ!
人気のある古典的な模様を少しだけ紹介します。
覚えておきたい人気のパターン
とんぼ | とんぼは前へ前へと飛ぶことから「勝つ虫(かつむし)」と呼ばれる。
勝負事などに縁起が良いとされている。 |
|
小桜 | 桜の花模様は見た目の美しさと散り際のいさぎよさから日本人に愛されている。 | |
青海波 | どこまでも続く大海原のように、穏やかで平穏な暮らしが続くようにとの願いを込めて。 |
模様にはすべて意味があり、おもしろいですね!
他の模様は、印傳屋さんのホームページに詳しく載っています。
更紗(さらさ)技法
この投稿をInstagramで見る
「更紗」は南蛮貿易によってインドから伝わった模様染のことで、印伝の更紗はその模様染をもとに考案された技法です。
染色された鹿革に、一色ごとに型紙を変え色を重ねていきます。
均等に色をのせるには、高度な技術と手間を要し、熟練した職人さんによって作り出されます。
こちらも印傳屋さんのYouTube に素晴らしい映像がありますので、ぜひご覧ください😊
(※音は出ません)
鮮やかな色彩がとてもきれいで、目を引きますね!
漆と更紗を両方使った印伝もステキです。
こちらは、漆でアジサイをふちどり、アジサイの紫色は更紗でつけています。
燻べ(ふすべ)技法
この投稿をInstagramで見る
燻は、稲わらを焚いてその煙で鹿革に模様をつける技です。
今回こちらも見学することができました。
仕入れた鹿の革は、場所によってザラザラしたりと一定ではないことが多いため、加工しやすいなめらかな状態にします。
よく熱した鉄製のコテで革をなでることによって、きめを整えしなやかな革にしていきます。
下の写真をよく見てください。
注!室内です。
職人さんがいらっしゃいますね。
写真真ん中の丸い樽に貼りついている白い部分が鹿の革です。
写真では2枚見えてますが、グルッと1周貼りついていて、この丸い樽は回転しています。
下から立ち込める煙によっていぶしていきます。
印傳屋さんのYouTube から貴重な映像です。(※音は出ません)
この燻技法、煙の色・状態・当たり方、さらには速度によっても出来具合が変わるとのこと。
さらに言うと、藁の丸め方・入れ方によっても変わるそうです。
1回20分。2日かけて茶褐色になるまで続けるというのだから、まさに職人技。
鹿革は1枚1枚違いがあるので、その違いや染まり具合なども見極めながら行うそうです。
「燻」はオーダーメイドの1点ものが多く、納期は何と半年!
お値段も漆に比べて3~5倍するそうですが、オリジナルの柄や家紋などを入れて作られるかたもいらっしゃるそうです。
落ち着いた風合いの燻、いかがでしょうか。
直営店の紹介
長い歴史のある印伝、職人さんが1つ1つ作っている…高級品なイメージもありますが、財布などは2万円台からあります。
小物入れや印鑑入れなどは、2,000円台から。
長く使える革製品なので、お気に入りを見つけたいですね!
ここでは、印傳屋さんの直営店(4か所)を紹介します。
中でも甲府本店が一番品ぞろえがいいとのことです😊
印傳屋 甲府本店
甲府本店の2階は、印傳博物館(一般200円・小中学生100円)もあります。
印伝の歴史や貴重な資料が展示されています。
印傳屋 青山店
【所在地】〒107-0062 東京都港区南青山2-12-15
【電話番号】03-3479-3200
【営業時間】10:00~17:00(年中無休)
印傳屋 心斎橋店
【所在地】〒541-0059 大阪市中央区博労町3-6-7
【電話番号】06-6243-5800
【営業時間】10:00~18:00(年中無休)
印傳屋 名古屋御園店
【所在地】〒460-0008 愛知県名古屋市中区栄1-10-21
【電話番号】052-265-6633
【営業時間】10:00~18:00(年中無休)
山梨県地方創生プロジェクト!メディア紹介
今回、CIH(株) の取材に同行させていただきました。
CIH(株) はカタログギフトを製作している会社です。
なかでも「ヤマナシカタログ」は、山梨県産のモノ・素材・材料・特産品・アクティビティのみで作られるカタログギフトです。
CIH(株)が取りまとめる「山梨県地方創生プロジェクト」に当サイトも参加しています。
「山梨・地方創生プロジェクト」とは
山梨県を活性化しよう!盛り上げよう!と取り組む個人メディアの集まりです。
山梨県内へ取材に行き【山梨県活性化のために発信していこう】というものです。
今回同時に取材をした方々を紹介します。
あわせてチェックすると、それぞれの目線での発見があります。
CIH(株)
ヤマナシカタログ・Facebook・Twitter・Instagram
甲州おもてなし忍者 三ツ者衆
はぎまる@山梨盛り上げ隊
PON(このブログを書いてます)
まとめ
印傳屋さんへの取材を通して、印伝の歴史、製品の作り方、技術の高さなどに触れることができました。
山梨県内でおみやげコーナーには必ずある「甲州印伝」、想像以上の歴史と技術に、衝撃を受けっぱなしでしたよ。
身近にある甲州印伝に、とても愛着がわいてきます。
伝統的工芸品・甲州印伝を後世にも残していきたいですね!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。